2.習慣化に役立つ2つの道具
依存症
プライベートな習慣化を促す手段の1つは、依存症をうまく利用をすることだ。依存症は習慣化により改善すべき対象ではあるが、依存するものをうまく選べば、逆に習慣化に利用することができる。
依存症は物、状態・行為、人間関係を渇望する状態を言う。それがないとイライラする、不安になる、落ち着かないといった心理状態に陥り、依存対象の摂取、依存行為、依存対象との接触を繰り返してしまう。ひどいケースでは薬物やアルコール依存症のように、依存対象から離れると、禁断症状が出るものをある。主な依存症を以下に示す。
1.物への依存
過食症、アルコール依存症、タバコ依存症、薬物依存症など
2.状態・行為への依存
ギャンブル依存症、スマホ・ネット依存、ゲーム依存症など
3.人間関係への依存
恋愛依存、親子の依存、友人への依存など
多くの依存症は、何らかのストレスを発端する。そのストレスから離れて心の平静を得るため、依存する対象を見つけてハマってゆく。ハマってゆく原因は、依存対象に触れることで、脳内の快楽中枢であるドーパミン神経が刺激されて快楽を感じるためだ。刺激で快楽を感じているうちはストレスフリーの状態になる。しかし、刺激が無くなると、上記のような渇望状態になり、再度快楽を得るための行為を繰り返し、依存症になってゆく。
依存症は生活や健康に悪影響が出るようなものに依存すれば病気と捉えられるが、依存したからといって問題にならない対象も多く存在する。たとえば、美味しいアイスクリームを食べて、すっかり気に入ってしまい、定期的に食べるようになるといった依存症はよくあることだし、特に問題にはならない。きっとあなたも、自分が依存している、そのような対象がいくつか思い当たるに違いない。
プライベートな習慣化は、生活や健康に悪影響が出る依存症を脱して、正しい生活態度を習慣づけることが目標となる。その目標を達成するのに、正しい生活と結びつく問題ない依存対象を見つけることが有効だ。見つけた対象に依存することで、問題の依存対象から自分の意識をそらし、正しい生活行動を定着するまで繰り返すことに利用出来る。
恐怖症
プライベートな習慣化を促すもう一つの手段は、依存症を止めるのに恐怖症をうまく利用をすることだ。問題となる依存対象への依存心を断ち切るのに、依存対象への恐怖心を植え付けることが役に立つ。
恐怖症は精神障害の一種で、特定の対象に対して恐怖、不安を感じる。恐怖症を持つ人は普段の生活でその対象を避けるように工夫して生活している。恐怖のレベルは様々で、不快感、めまい、動悸、震え、発汗、吐き気といったものから、ひどいケースではパニック発作を起こす場合もある。主な恐怖症を以下に示す。
1.広場恐怖症
- 群衆が集まる広い場所、公共交通機関の中など、逃げ場がない状態に恐怖を感じ、パニック発作を起こす。
2.社会恐怖症
- 社交不安障害ともいう。公の場で、自分が愚かに見られていないか、その場に相応しくないと見られていないか不安になり、動悸、震え、吐き気、赤面、発汗などの身体的な症状を強く発現する。
3.特定の恐怖症
- 高所恐怖症、閉所恐怖症、先端恐怖症、動物恐怖症など特定の対象に恐怖を感じる。
恐怖症の原因については、脳内の神経伝達物質に関連して、幾つか説がある。不安や恐怖となる対象と接すると、脳内に神経伝達物質のノルアドレナリンやセロトニンが多く放出され、恐怖を感じるという説がある。また、恐怖症の症状がひどい人は、脳内の炭酸ガスの受容体が敏感で、体内の炭酸ガスがちょっとした増加だけで過敏に反応するといわれている。その過敏反応の結果、窒息を防ぐ脳内の機能が誤作動し、自律神経系に作用して、呼吸困難や窒息感、胸の不快感、逃げ出したくなる衝動を生じさせるとの説がある。
この恐怖症を根本的に克服するのは難しく、基本的には恐怖の対象に慣れるしか方法がない。
恐怖症は誰しも持っている。あなたも、苦手なものを避けたり、人前で緊張してあがったりした経験があるだろう。一度認識した恐怖を克服するのは容易のことではない。しかし、この性質を逆に利用すると習慣化の助けになる。問題となる依存症がある場合、その依存行為を行うことで、強い不快感や恐怖を感じるような状態を作り出せれば、依存症から脱却する良い手段となる。
次のページから、依存症と恐怖症をうまく利用した習慣化の方法を、具体例を挙げて説明してゆく。