8.習慣化で身につく大人の態度
落ち着きこそ大人の証
このサイトのまとめとして、習慣化を通して身につく、大人としての態度について述べたい。直前の2つのページで述べた習慣化の意義と問題点は、実はお互いがつながっている。これらの関係を通して大人が身につけるべき態度が見えてくる。
習慣化の意義には、行動・思考を自動的に行うことによる心身の安定化、人の気持ちに対する深い理解力の獲得の2つがあると述べた。しかし、習慣化により定着した自動的な行動には、想定外の状況への対応を妨げる問題点があることを指摘した。特に同一状況下にある他人との習慣的な思考・判断の違いは大きなトラブルを引き起こす。
子供時代から、自分の習慣が通用しない状況での小さな失敗経験を重ねることで、多少はこの問題点を改善する力は身につく。
一方で、習慣化で獲得する他人の気持ちへの理解力は、この問題点を解決する大きな力となる。それは、この理解力が、悪習慣を克服して正しい生活態度を習慣づけた経験に基づき、善悪正反対の行動を取る人の気持ちをどちらも実感として理解できるものだからだ。その理解力が、様々な場面で遭遇する他人の思考・判断を、自分の常識を超えて想像する力となる。
自分の習慣が通用しない失敗経験、悪習慣を克服する経験を何度も積むことで、人は様々な場面で判断に幅持たせることができるようになる。自分の習慣的な判断で行動する前に、自分が想定していることとは反対の事態が起こることや、その場にいる他人が自分とは異なる判断で行動することを想像し、状況を観察しながら慎重に行動できるようになる。
これは経験を積んだ大人ならでは行動だ。身につけた習慣により、合理的な行動をしつつも、想定外の事態が起こったら柔軟に対応する、落ち着きある行動だ。この落ち着きは、習慣に基づく合理的な行動と、その状況で起こりつつあることをリアルタイムで把握しようとする、想像力が組み合わさって生み出されるものだ。人にとって、経験により得られる最大の財産は、この想像力と言える。
人は皆、自分が直せない悪習慣や癖に対して、よく自己嫌悪に陥る。しかし、悪習慣を行っていることをネガティブに考えるのはやめるべきだ。悪習慣を克服する経験を積んで、人として成長する機会が、今、自分には与えられているとポジティブに考えて生きるべきだ。想像力のある大人として成長するためには、その経験がどうしても必要なのだ。その意味で、悪習慣を一時的に体験することは必要なことなのだ。
成長して大人になるということを習慣化を通して見つめ直した時、大人になるとは、日々の生活の行動に、経験に裏打ちされた落ち着きが態度としてにじみ出る人になることだと、私はつくづく思うのである。
あとがき
このサイトでは、著者が、これまでの生活で行ってきた、様々な習慣化を通して感じてきたことを文章にまとめた。
特に子供時代からしつけらる基本的な生活習慣と、大人になってから行う習慣化の違いに着目して考察を進めた。大人になって行う習慣化にはどんなものがあるか、その難しさは何か、習慣化のコツを経験から見出せるか、大人になってから行う習慣化の意義は何かといったことをテーマとして考え、文章にしてみた。
考察の結論は、習慣化を通して、落ち着いて行動できる大人になることが大事だという、一文にすると極普通のものになった。しかし、習慣化の過程を細かく考察してゆく中で、この落ち着いて行動するとはどういうことなのかを、人の想像力との関係でより深く理解できたと思う。
このサイトをご覧になったすべてに人にとって、ご自身の生活習慣を見直す良い機会になること、習慣化の意義を考えるきっかけになることを切に願いながら、文章を閉じたい。